こんなお答えでは如何でしょうか?             もどる


a 「一期一会」を「いっきいっかい」と読むと、なぜ間違いだと言われるの?

 仏教思想から出てきた言葉は、呉音で読みます。平等院というお寺がありますね。「へいとういん」
 というと笑われちゃいます。漢音ではそれで好いのですが、「平等」は仏教思想に基づく用語です
 から、呉音で読むべく伝わって来ています。「虚仮にする」を「きょかにする」と言わないのも同じです
 (「こけにする」ですよね)。講義資料のEをご参照ください。


b 「景気」って何? どうして「景」と「気」を書くの?(「景」って何?)

 「景」は「かげ」とも「ひかり」とも読む字で、陽光の当たる面を言います。例えば一本の木が立って
 いて、そこに太陽の光が燦々と当たっているとします。当然、地面にはこの木の影ができます。
 それが「影」ですが、その反対側の、光が当たって明るくなっている部分が「景」です。(ちなみに
 木の下に出来る木かげは、「蔭」です。)「景」の面は、「彡」が無く、色が着いて見えますので、
 それを「景色」と言います。陽光の当たっている空間は光に充ち満ちて明るく、物がはっきり見え
 ますね。それは「光景」と言い、その光景を見ることを「観光」と言います。ところで陽光の照らし出す
 空間には大気すなわち「気」も充満しています。そして、「景」とともに空間の雰囲気をかもし出して
 いますね。それが「景気」です。


c 「持」という字は、なぜ手偏に「寺」を書くの?(「寺」とどう関係がある?或いは、ない?)

 「寺」は、もともと役人の宿直場所を言った言葉で、やがてその場所を借りて仏教僧が説法するように
 なったので、「てら」の意味になったものです。「寺(ジ)」のつく漢字は、皆その場にぢっと止まる意が
 あります。たとえば同じ漢字ファミリーの「痔」。これなんて、とてもたちが悪いですよね。おできがお尻に
 ぢっと止まる病なのですから。これらは「右文説(漢字ファミリー)」の考え方に基づいて考察してみると
 よく分かります。講義資料のMをご参照ください。


d 「あいさつ」は漢字で「挨拶」と書くけれども、「挨」と「拶」はそれぞれどんな意味?

 漢和辞典を引いてみれば分かります。「挨」は押し開く意、「拶」は押し合う意から、もともとは
 人が大勢押し合いへし合いして行く意だったのですね。やがて、この語が日本に輸入され、
 人々が押し合いへし合い行くような場での、人と人との対応を「挨拶」と言うようになったんだと
 思います


e 漢字の音読みの数(知っておかなければいけない数)は一体どのくらいあるの?

 数えたことがないので分からないのですが(無責任で済みません)、現代中国語の音節から推測
 して、400くらいではないでしょうか。講義資料のIの表を完成させ、数えてみると分かります。
 それをせずとも、もちろん「日本漢字音表」には載っているはずです。


f 和語の中に、「船・舟」「歳・年」「視・見」「聴・聞」「目・眼」「足・脚」……等のように、
  同じ訓読みの異った字が有るのはなぜ?


 「船・舟」は、もともとは関西弁と関東弁の違いだったようです(この場合の関所は、函谷関です)。
 「歳」は星座から見た一年、「年」は「稔」すなわち稔りからみた一年です。「視・見」は有名な話で、
 ちょうど英語の look at (watch) と see の違いみたいなものでしょう。「聴・聞」も同じです。「目・眼」は、
 もともとは体の部位の違いを言ったものでしょう。


g 旁(つくり)に「青」のつく漢字の音読みは、すべて「セイ」と読んでいいの?

 訛っているものもありますが、基本的には「セイ」と読んで好いんだと思います。「青(セイ)」は
 右文説(漢字ファミリー)に基づいて言えば、すべて青く透けて澄んだものを表しますね。
 形声文字の声符は、発音だけでなく意味も表しています。講義資料のMをご参照ください。


h 「墓、暮、幕」など、字のなかに「莫」が入っている漢字には、みな隠す意味が有るってほんと?
(ほかにも「募慕模膜獏漠」等があるけれども、これらもそう?)


 右文説に基づいて言えば、その通りでしょう。「莫(バク)」は、隠す意です。講義資料のMを
 ご参照ください。


i 漢和辞典に女偏は有るのに、なぜ男偏は無いの?

 「士」(おのこ)偏がありますが、「女」偏と対応するのは「人」偏です。人偏があるから
 男偏がないのですね。英語の Woman と Man の違いみたいなものでしょうか。


j 漢字に音読みと訓読みが有るのはなぜ?ついでに、音読みにも呉音とか漢音とかが有る
 のはなぜ?

 「漢音」と「呉音」は、時代というよりも、漢字音が日本に輸出された時の場所の違いです。


k 次の漢語の造語構造や成立事情はどうなっているの?
  若干 一般 不況 景気 市況 金融 融資 融通 影響 情報 規模 注文 面倒
  航空 処理 観光 光景 景色 気象 管轄 所轄 葡萄 枇杷 琵琶 水準 予断
  検討 契機 郵便 事故 条例 点検 点呼 経験 奇跡 候補 準備 不倫 条件
  福祉 制度 珈琲 椅子 帽子 世界 結果 途中 環境 快諾 偶然 未遂 臨界
  美化 仕事 ……

 それぞれの語で成立事情が異なりますので、講義資料の@A以下をご参照ください。
 例えば「若干」ですが、数というのは、「一」から始まり「十」までとなっていますね。
 「干」という字は、この「一」と「十」とを合わせた字形をしてますので、一のようでもあり
 十のようでもあって、幾つとも言えない、そのように、一から十までの間で数が定まらない
 時に「若一、若十」(一のごとく、十のごとし)つまり「若干」(干のごとし)と言ったようです。
 一から十までの間の不定数を表すことになります。このことは、中国の『字彙』という辞書
 の「干」の部に出ています。


l 次の語もすべて漢語なの?
  天 地 脳 情 蝶 蜜 愛 三 説 胃 腸 罰 党 欲 肉 文 別 法 線 県
  例 礼 論 鵜 量 案 餡 菊 軸 辺 利 ……

 これらは、一文字で表記されていても、立派に意味を担った一単語です。ただし、どれも音読み
 ですよね。このように、音読みで意味が通じるものは、漢語なんだと思います。たとえば、「恋」は
 和語ですが、「愛」は漢語です。そういうことです、「罪」は和語ですが、「罰」は漢語なんですね。


 もどる