漢文学の手引き
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  (漢文資料を読む学生さんが、兵庫教育大学の図書館を利用する場合を想定してます。)

漢籍の原文を探す
 中国の詩人や作家の作品(白文、版本)をご覧になりたい場合は、図書館1階の書庫1にある
「四庫全書」「叢書集成」などの叢書類に当たれば、だいたい載っています。テキストとして
良いものを求めたい場合は、所収作家が少ないですが、「四部叢刊」がお薦めです。
 「四庫全書」は全1500冊ですので、何冊目に所収されているかが分からないことがあります。
その場合は、最後に索引本(目録索引)が1冊ついていますので、それで検索できます。
「叢書集成」も同様です。
 なお、これらの叢書に所収の作家や詩人およびその作品は、図書館の検索システムではヒット
しませんので、無いのではなく、検索できないことを知っておく必要があります。

「大漢和辞典」を引く
 「大漢和辞典」(全13巻と語彙索引が図書館に開架)は、語彙索引か第13巻目の音訓索引で
検索するのが便利ですが、歴史的仮名遣いになっていますので、例えば「寛」字は、「かん」では
検索できません。「くわん」です。皆さんのお手もとの簡便な漢和辞典に歴史的漢字音が出ていま
すので、確認してから引くようにしてください。

「漢語大詞典」を引く
 「大漢和辞典」に出ていない語彙は、「漢語大詞典」で引いてみるといいと思います。全12巻
+索引1巻の、やはり大部のものです。しかもこれは、中国の大漢和辞典とも言われますように、
中国語で書かれています。漢字を見れば大体の意味は分かると思いますが、分からない言葉は
図書館に開架されてます中国語辞典で調べてみるといいと思います。
 「漢語大詞典」の引き方は、筆画索引かピンイン索引で引きます。ピンインはお手もとの簡便な
漢和辞典に載ってますので、それを参照すれば便利です。「寛」字ならば kuan の所を見れば
出てきます。

「佩文韻府」を引く
 「大漢和辞典」や「漢語大詞典」に出ていない語彙は「佩文韻府」や「駢字類編」を引いてみると
出てくることがあります。ただし、「韻府」や「類編」は辞書ではなく、作詩のための語彙集です。
しかも「韻府」と言われるように、韻字すなわち熟語であれば後の字の方の付く語彙を引くもの
です。その点で先ず注意が必要です。
 「韻府」の引き方は、索引本には漢字の四隅の形を番号化した四角号碼(しかくごうま)が付いて
いますから、これで引くと便利です。例えば、よく分からない「臨訣」という語彙を引いてみることに
します。まず引きたい語彙の前の字の画数を確認し、索引の筆画索引を見ます。「臨」であれば
総画17画の「臣」部に出てきます。そこを見ますと、七八七六−六という四角号碼が記されています
から、次ぎに索引の七八七六−六を見ますと「臨」字を引き当てることができます。そしてさらに
「臨訣」をさがしますが、「訣」は四角号碼は〇五六三−〇ですから、このはじめの二数字〇五の所
を見ますと「臨訣」という語彙が出てきまして、「佩文韻府」本文の三七八一頁の三段目と四七四〇
頁の一段目に拾ってあることが分かります。そこで次ぎに本文のその頁を見ますと、用例が出て
いますので、その用例から必要な意味を読み取ればよいわけです。
 もちろんこの用例は辞書の解説ではありませんので、語の意味を確定する必要が出てきます。
出典が書いてありますので、訳本が有ればそれに当たってみるのが意味を知るのには最も手っ取り
早い方法だと思います。

「駢字類編」を引く
 「佩文韻府」と同様の類書のひとつに、「駢字類編」があります。引き当てたい語彙が名詞の場合は、
「韻府」よりも便利です。全13巻の13巻目に索引がありますから、「漢語大詞典」と同様、ピンインで
引き当てるのが手っ取り早いと思います。これも「韻府」同様の語彙用例集ですから、用例を引き当て
た後は、語の意味の確定が必要です。
 図書館で「駢字類編」をほかの人が使っている時は、「古典複音詞彙輯」全8巻で引くことも出来ます
(書名が変わっているだけで、中身は同じです)。類書には他に、「淵鑑類函」全12冊もあります。

「漢語文典叢書」を引く
 漢文の訓読を確認するには、「漢語文典叢書」が便利です。全7巻、うち1巻が索引です。
たとえば漢文中に「如許」という語(助辭)が見え、この訓(よみ)が分からなかったとします。
こういう時に主として江戸時代の漢学者たちが訓を固めていった「漢語文典叢書」を役立てる
ことができます。
 引き方は簡単で、索引の音読み検字表の「如」すなわち「ジョ」のところを見ると、41ページとあり、
41ページを開くと「如許」= [E130上a譯辭] が検索できます。これは第6冊目の130ページ上葉
の右葉(=右側の頁)に載っていることを意味します。「譯辭」とは、松井河樂「語助譯辭」の略号です。
 「如許」は「許事」の項に載っていて、「如許ノ二字ヲ此クノ如シトヨムナリ」と訓を示してくれて
あります。文語で解説されていますが、慣れればすぐに分かるようになります。
 このほか、「文典叢書」は、同訓異義字を引くにも便利です。伊藤東涯の「操觚字訣」と荻生徂徠
「譯文筌蹄」は使いこなせるようになると、漢文の読解に精度が増します。