劉基郁離子全訳              正 誤 表
      附:『明史』劉基伝 全訳
     (表紙のデザインは原版です)


   諸葛孔明の再来といわれ、明の太祖

  朱元璋の蜂起を支えた劉基が、元王朝

  末期の世相を機知に富んだ文章で著した

  短編寓話集『郁離子』の全訳。民本思想・

  重農主義に支えられた劉基の厳しい目が

  官界や為政の腐敗する姿を、虎や狐、

  蛙や蛇の姿に託して暴き出します。

   帝王学の書とも言われ、また、中国の

  イソップとも言われているようです。

  (稀代の大軍師  劉伯温 誠意伯 文成公

  Liu Ji “Yulizi” 原文 原文


   2007年10月 白帝社 刊

     本体¥2000E+税

 ISBN978−4−89174−892−0


  明の太祖朱元璋を補佐し、明王朝建国に寄与した劉基の寓話集『郁離子』と、『明史』劉基
 伝の現代語訳です。読み込んでいけば、民本主義・重農主義とも言われる劉基の思想をは
 じめ、その政治観、大衆観、宇宙観、人となりまでが明らかになります。


 [以下、目次より]( ( )内は本文中の一節)

  000 劉基の生涯と『郁離子』執筆 p.14
    ※『明史』劉基伝の全訳

  001 鳳凰を真似る―「千里馬」 p.30
    (「かりそめにも祈りを心の誠に求め、形で似せることをしなかったのです。」)

   ※この「千里馬」中の「……馬は則ち良し。しかれども冀の産に非ざるなり。」という一文
    は、北方出身者でないと重用されない元という時代を風刺している言葉だという説が
    あります。『郁離子』を読む時に、大いに参考になる捉え方だと思います。

  002 時世を憂える―「憂時」 p.
31
    (「大海原を航るのに、舵取りのいないことを私は心配しています。」)

  003 無益な憂い―「戚之次且」
p.32
    (「天が雨を降らそうとしている時、穴の中の蟻にはそれが分かります。」)

  004 人材の登用―「規執政」
p.34
    (「農夫が田を耕す時は、頚木(くびき)を羊に背負わせたりはしません。」)

  005 古いものこそ逸品―「良桐」
p.35
    (「国のお抱えの琴職人が言ったのです、『この琴は古い物ではありません』と。」)

  006 横倒しにされたままの天下―「巫鬼」
p.36
    (「天下も横倒しになったまま、起きあがれません。起こそうとすれば、災禍を被ります。」)

  007 天下という身体―「亂幾」
p.36
    (「天下は大きいから村ひとつを失ったところで損はない、と人は言います。」)

  008 梟は梟―「養梟」
p.38
    (「フクロウに桐の実を与え、鳳凰のように鳴くことを願うのと、何ら変わりません。」)

  009 献上品―「獻馬」
p.38
    (「戦利品の馬を王に献上すれば、臣下はあなたの獲たものは一つでないと見ます。」)

  010 国王は烏がお好き―「燕王好烏」
p.39
    (「カラスは腐ったものを掴んで来ては食べ、王の庭を生臭い臭いで一杯にしました。」)

  …… [ほか]



  本書(『郁離子』全訳)には原文がありません。原文はすでに電子版が公開されております。
 お手数でなければ、そちらをご覧になられると宜しいかと存じます。(首都圏であれば、
 『郁離子』の原文は中国書籍専門店でももちろん簡単に入手できます。)
          電子版の原文ご要り用の方は、ここをクリック。  又はここ。
  劉基の詩文の訓読は、和刻本が有ります。

  『郁離子』の書き下し文(読み下し文)が欲しいという方は、原文をダウンロードした後、
 本書の訳文を参照し、作ってみて下さい。例えばこんな感じです。↓(005 「良桐」より)

     工之僑 良桐を得、断ちて琴と為し、弦して之を鼓せば、金のごと声あり而して
    玉のごと応ず。自ら以て天下の美と為すや、之を太常に献ずれば、国工をして
    之を視しめて曰はく、「古からず」と。之を還す。
     工之僑 以て帰り、諸れを漆工に謀り、断紋を作る。又た諸れを篆工に謀り、
    古竅を作る。匣して諸れを土に埋め、期年にして之を出だし、抱へて以て市に
    適く。貴人過ぎて之を見、之に易ふるに百金を以てし、諸れを朝に献ず。楽官
    伝へ視て、皆曰はく、「希世の珍なり」と。
     工之僑 之を聞き、歎じて曰はく、「悲しきかな、世や。豈に独り一琴のみならんや。
    然らざる莫きなり。而るに早に之を図らざれば、其れ与に亡びん」と。遂に去り、
    宕冥の山に入り、其の終はる所を知らず。
                                 (005 「良桐」 訳本 p.35参照)

 『郁離子』を読むための参考文献

                    劉基『郁離子』関連の文献

      

   ほかに林家驪氏『劉基集』(浙江古籍出版社「両浙作家文叢」所収)もありました。

   『郁離子』の訳本は、中国にはたくさんあります。近年、王立群氏も再版を出されてます。徐一キと呉從善の序
   が訳されてます(徐・呉両序は、唐漢氏の訳注「傳世智慧大全」でも訳されています)。
   劉基の生涯を見わたせる年譜としては、カク兆矩氏「増訂劉伯温年譜」(中州古籍出版社)等があります

  ※これら参考文献中でも、『劉基事跡考述』は大いに参考になります。読むと、我々が一般
   に抱いている劉基の人物像が、かなり揺さぶられ、劉基ってそんなにも普通人であったの
   かという気持ちにさせられます(もちろん賢人です)。

   劉基の文章は、「明清八大家」の一人として蘇州大学の研究室でも取り挙げているように
  (銭仲聯主編「明清八大家文選叢書」)、注目に値する多くの価値を含んでいるように思い
  ます。

   劉基について知りたい方は、 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~nikaido/liuji.html が
  とても詳しいです。

   中国には、劉基について専門的に研究している機関があります。詳細は、中国劉基文化
  網 http://www.liuji.org/ にアクセスしてみて下さい。
  (中国語です。↑このURLをクリックすると、簡体字で「劉基」と書いたページが出ます。右下に「直接進入>>」と
  書いてありますので、そこをクリックすると、「劉基 帝師王佐 誠意伯温」の表題の下に各項目へのリンクが出て
  来ます。『郁離子』に関する論評も幾つか載っているようです。)